ラッチメモリとは?電源OFFでも状態を保持する仕組みと使いどころ

PLC入門

〖対象〗PLC初心者/ラダーを触り始めた人
〖前提〗「自己保持回路」「I/O(入力・出力)」の基本がわかると理解が早いです
〖次に読む〗自己保持回路インターロックタイマー


「電源を切ったら、さっきまでの状態が全部リセットされた…」
PLCを触っていると、こういう場面が必ず出てきます。

たとえば現場では、

  • 加工完了のフラグが電源OFFで消えてしまい、同じワークを二度加工しそうになる
  • ワークカウントが電源OFFで0に戻ってしまい、ロット管理や累計が追えない

といった“困る再起動”が起こりがちです。

この記事では、こうした問題を防ぐための仕組みである 「ラッチメモリ(電源断保持)」 を、実務で使う場面(二度加工防止・カウント保持)を中心にわかりやすく解説します。



1. はじめに:電源を切っても「状態を残したい」ことがある

PLCの制御では、電源を切れば多くの信号はOFFになり、状態はリセットされます。
しかし、電源が落ちても「これは残っていてほしい」という情報がいくつかあります。

たとえば、

  • 加工が終わったことを示す「加工完了フラグ」(二度加工を防ぎたい)
  • 今日の生産数やロット残り数などの「ワークカウント」(0に戻したくない)

このような“残したい情報”を、電源OFF後もPLC内部に保持しておく仕組みを
ここでは「ラッチメモリ(電源断保持)」として説明します。


2. ラッチメモリ(電源断保持)とは?

PLCには大きく分けて、

  • 電源OFFで消える領域(非保持)
  • 電源OFFでも残る領域(保持=ラッチメモリ)

があります。

呼び方はメーカーや機種で違いますが、考え方は共通です。

  • ラッチリレー/保持リレー/ラッチ領域
  • KEEP(キープ)リレー/保持データ など

ここで大事なのは命令名ではなく、

「電源を落としても残したい情報か?」
「電源投入時に必ず再評価すべき情報か?」

という判断です。



3. 例① 加工完了フラグを保持して二度加工を防ぐ

ここが、ラッチメモリが“効く”典型例です。

3-1. 何が問題になる?

加工が終わったら「加工完了フラグ(加工済みフラグ)」をONする設備を想像してください。

  • 加工が完了した後に、電源が落ちた/ブレーカが落ちた
  • 電源を入れ直したら、加工完了フラグが消えていた

この状態だと、機械側は 「加工済みか未加工か」を判断できない ため、

同じワークをもう一度加工してしまう(=二度加工)

リスクが出ます。
二度加工は品質不良につながるので、制御側で防ぎたいポイントです。

3-2. 対策:加工済みフラグを“電源断でも残す”

そこで、加工完了フラグを ラッチメモリ(電源断保持) に持たせます。

電源を入れ直しても加工済みフラグが残るので、制御としては例えばこうできます。

  • 加工済みフラグがONのときは、サイクルスタートを受け付けない
    (ワーク入れ替えを確認できるまで動かさない)
  • 画面/表示灯で「加工済みの可能性あり」を明確に表示する
  • 「ワークが確実に入れ替わった」と判断できたタイミングでのみフラグをOFFする

3-3. “消していい条件”をちゃんと決める

ここが設計のコツです。

加工済みフラグは便利ですが、人が適当に消せるようにすると事故の元になります。
おすすめは、設備に合わせて「確実に入れ替わった条件」で消すことです。

例)

  • ワーク検知を確認してからOFF
  • 加工完了リセットボタンでOFF

4. 例② ワークカウントを保持する(ロット/累計)

次に多いのが、数値データ(カウント)の保持です。

4-1. 電源OFFで0に戻ると困ること

  • 今日の生産数が分からない
  • ロット残り数が分からない
  • 累計加工数・累計稼働時間が消える(改善や保全に使えない)

つまり、運用が崩れます

4-2. リセットは「電源断」ではなく「仕様」で行う

ラッチにするなら、必ず決めるべきはこれです。

  • 誰がリセットできるか(オペ/保全/管理者)
  • いつリセットするか(ロット開始、日次、段取り替え)
  • 誤操作防止(確認ダイアログ、パスワード、ログ)

電源OFFがリセットにならないぶん、リセット条件を仕様として持つのが大事です。


5. ラッチして良いもの/ラッチしない方がいいもの

判断基準はシンプルです。

電源が変わっても残したい情報か?
それとも電源投入時に必ず再評価すべき状態か?

5-1. ラッチして良い例(残したい情報)

  • 加工完了(加工済み)フラグ(※二度加工防止)
  • ワークカウント(累計/ロット残り数など用途に応じて)
  • 設定値・補正値(運用上、消えると困るもの)
  • 異常「履歴」フラグ(過去に一度でも発生した事実)

5-2. ラッチしない方がいい例(電源投入後に再評価すべき状態)

  • インターロックの状態
  • センサ入力の状態
  • 一時的な異常の状態

ポイントは
現在の状態は基本ラッチしない
ということです。


6. 設計の注意ポイント

ラッチメモリは便利ですが、設計の決めごとがないと“わけが分からない制御”になりがちです。
最低限、次のことは決めておくのがおすすめです。

6-1. 「消していい条件」を先に決める

特に加工完了フラグは重要です。

  • 「ワークが確実に入れ替わった」条件
  • 「イレギュラーな時は管理者だけが消せる」運用

など、事故になりにくい消し方にします。

6-2. “残っている”ことを見える化する

ラッチは「残る」ので、作業者に見せないと誤操作につながります。

  • 加工済み表示(画面/ランプ)
  • ロット残り数・累計数の表示
  • リセット操作の確認表示(本当に消していいかのポップアップ表示等)

7. まとめ

ラッチは便利ですが、何でも保持すると危険です。
「残したい情報」と「再評価すべき状態」を分けるのがコツです。


<執筆者の実務コメント>
加工完了フラグの記憶は「品質不良(二度加工)」を防ぐのに必ず必要です。
一方で“消し方”を間違えると逆未加工ワークになってしまう恐れがあるため、ワーク入れ替えが確実に確認できる条件でのみリセットする、という設計にしておくと安心です。


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