はじめに
PLCやラダー図を学ぶとき、必ず出てくるのが 自己保持回路 です。
名前は少し難しく聞こえますが、実はとても身近な仕組み。
工場のスタート/ストップボタン、照明のスイッチなど、私たちの周りの「押したら動き続ける仕組み」は、この自己保持で実現されています。
自己保持回路とは?
自己保持回路とは、入力のスイッチから手を離しても、出力が動き続ける回路のことです。
普通のスイッチなら、押している間だけON、離すとOFFになります。
しかし設備の運転やモータの起動は「押し続ける」わけにはいきません。
そこで、一度ONにしたら自分自身の回路で動作を保持し、別のスイッチで止めるようにしたのが「自己保持回路」です。
ラダー図で見る自己保持
ラダー図では、自己保持は次のように表現されます。
- スタートスイッチ(A接点) … 最初のONのきっかけ
- コイル(出力) … モータやランプを動かす部分
- 自己保持接点(A接点) … コイルに連動してONになり、回路を支える
- ストップスイッチ(B接点) … OFFのときに導通しており、押すと回路を遮断する
これらを組み合わせることで「スタートで動き出し、ストップで止まる」流れが作られます。
動作の流れを追ってみよう
- スタートを押す
スタート接点がONになり、コイルがON。 - 自己保持が働く
コイルがONになった瞬間、自分の接点(自己保持接点)もONになる。
これでスタートを離しても回路が維持される。 - ストップを押す
B接点が開いて回路が遮断。コイルがOFFになり、自己保持も解除される。
つまり「スタートは始動のきっかけ」「自己保持が支え」「ストップで終了」という流れです。
実際の使われ方
- モータの起動/停止
→ スタートで回転開始、ストップで停止。工場設備では必須。 - ライン運転のON/OFF
→ 生産開始と終了を簡単に切り替える。 - 照明やランプの保持
→ 一度押せば点灯を続け、必要なときに消す。
注意ポイント
- ストップはB接点で設計する
断線時も安全に止められるため。 - 非常停止回路と連動させる
非常停止で自己保持が必ず解除されるようにする。 - 保持の解除忘れに注意
ON状態のままにすると予期せぬ起動につながる。
まとめ
- 自己保持回路は「一度ONすると、出力を保持し続ける仕組み」
- ラダー図では スタート(A接点)+自己保持接点+ストップ(B接点)+コイル で表現される
- 実務でも資格試験でも頻出の、ラダー図の基本中の基本
自己保持を理解すると、ラダー図の動きを「流れで追う」感覚が身につきます。これは次のステップ、より複雑なシーケンス制御を学ぶための基礎になります。
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