【対象】初学者/実務者の基礎復習
【前提】先に「PLCとは?」を読むと役割の違いが整理できます
【次に読む】「I/Oとは?」「インターロック」「ラダーとは?」
はじめに
製造現場や自動機の世界では、「NC」という言葉をよく耳にします。
- NC装置
- NCプログラム
- NC制御
など、機械の“頭脳”として当たり前のように使われていますが、
「PLCと何が違うの?」
「NCは具体的に何をしているの?」
と聞かれると、意外と説明に困ることが多いです。
この記事では、
- NCとはそもそも何か
- どんな構成で機械を動かしているのか
- PLC(PMC)との役割分担はどうなっているのか
を、工作機械メーカーで約20年制御設計をしてきた立場から、できるだけシンプルに整理していきます。
NCとは?
NC(Numerical Control)とは、機械の動きを「数値データ」で指示して自動で動かす仕組みです。
ここでいう「数値」とは、たとえば次のような情報です。
- どの軸を、どの位置まで動かすか(X, Y, Z などの座標)
- どれくらいの速さで動かすか(送り速度)
- 主軸を何回転で回すか(回転数)
これらをプログラムとしてあらかじめ書いておくことで、
人が手でハンドルを回したり、ボタンを押さなくても
機械が自分でその通りに動いてくれる
のがNC制御のイメージです。
工作機械でいえば、
- X・Y・Z軸を指定座標まで送り
- 主軸を指定回転数で回転させ
- クーラント(洗浄液)を必要なタイミングでON/OFFする
といった一連の動作を、「数値とコードの組み合わせ(Gコードなど)」で指示しているのがNCです。
NCの構成と役割
NC制御は、ざっくりいうと次のような信号の流れで動いています。
プログラム → NC装置 → サーボアンプ → サーボモータ → 機械の動き
+ サーボモータ → エンコーダ → NC装置(フィードバック)
それぞれの役割を分けて見ると、イメージしやすくなります。
- プログラム
Gコードや専用言語などで書かれた、機械への「指示書」です。
どの位置まで、どの速さで、どんな順番で動かすかを定義します。 - NC装置
プログラムを読み取り、軸や主軸を動かすための「指令値(位置・速度)」を計算します。
複数軸の補間(直線補間・円弧補間など)や加減速の計算もここで行います。 - サーボアンプ・サーボモータ
NC装置からの指令値を受け取り、モータに流す電流を制御する部分です。
エンコーダ(位置センサ)からのフィードバックを使いながら、指令通りの位置・速度になるように制御します。 - 機械(テーブル・アーム・主軸など)
サーボモータの回転がボールねじやギアを通してテーブルやアームの直線運動・回転運動に変換されます。
NCはこの一連の動作を高速で行うことで、
- 高精度な位置決め
- なめらかな曲線軌跡
- 安定した送り速度
を実現しています。
NCとPLCの違い
NCとPLCはどちらも「制御装置」ですが、得意分野と役割が違います。
ざっくり言うと、
- NC …「動き(軸・主軸)の制御」を担当する頭脳
- PLC …「周辺機器や条件の制御」を担当する頭脳
という関係です。
NCとPLCの役割の違い
| 項目 | NC(数値制御) | PLC(シーケンサ) |
|---|---|---|
| 主な役割 | 機械の動き(位置・速度)を数値で制御 | 外部信号(スイッチ・ランプ・バルブなど)をON/OFF制御 |
| 扱う対象 | X/Y/Z軸、回転軸、主軸、送り軸など | ポンプ、チャック、クーラント、ドアスイッチ、パトライトなど |
| プログラム | GコードなどのNCプログラム(パートプログラム) | ラダー図やステップシーケンス |
| よく使われる分野 | 工作機械・ロボット・位置決め装置など精密な動きが必要な機械 | 搬送装置・組立ライン・検査装置・設備全体のシーケンス制御 |
FANUCのNC装置では、内部にPLC機能(PMC)が組み込まれています。
- NC:軸の位置決めや補間制御を担当
- PMC:扉スイッチ・ポンプ・チャック・シリンダ・パトライトなど、周辺機器を担当
という分業になっていて、
「動きの制御(NC)」と「周辺機器の制御(PLC)」を一体化した構成
になっています。
NCで制御される主な動作
NC制御では、モータを回すだけでなく、機械の一連の動きをまとめて管理しています。代表的な動作を少し詳しく見てみましょう。
- 軸の位置決め
テーブルやアームを、指定された座標まで正確に移動させます。
工作機械で言えば、X・Y・Z軸を「X100.000 Y50.000」のような位置まで送り込む処理です。 - 回転制御(主軸制御)
主軸やモータの回転数を、指定した速度で一定に保ちます。
切削条件に応じて、S指令(回転数)に従って主軸モータを制御します。 - 動作の順序管理
原点復帰 → 位置決め → 加工 → 退避 → 次ワークへ…といった
一連の動作を決められた順番で自動実行します。 - 複数軸の同時制御(補間)
2軸以上を同時に動かして直線や円弧を描く「補間制御」を行います。
これにより、滑らかな曲線加工や同時5軸加工などが可能になります。 - 自動運転や復帰動作
サイクルスタートからプログラム終端までの自動運転や、
停止後の復帰動作(ブロックリスタートなど)もNCが担当します。
これらの動作はすべて、プログラムに書かれた数値や条件に従って、NC装置が自動で判断・実行しています。
現場エンジニアの視点から見たNC
現場でNCとPLC(PMC)を扱っていると、経験が浅い作業者は次のようなポイントで悩むことが多いと感じています。
「NCでやるか、PLCでやるか」の切り分け
- 軸の動きそのもの → 基本的にはNC側(パラメータ・機能)で対応
- 条件の組み合わせやインターロック → PMC側(ラダー)で対応
という整理ができていないと、
「どっちを直せばいいのか分からない」「どこまで機械メーカーの仕事で、どこからがユーザーの仕事か」などがわからなくなりがちです。
まとめ
本記事では、NCについて次のポイントを整理しました。
- NC(Numerical Control)は、機械の動きを数値データで制御する仕組み
- プログラム → NC装置 → サーボアンプ → サーボモータ → 機械という流れで動作する
- NCは軸の位置・速度・補間制御など、「動きそのもの」を担当する頭脳
- PLC(PMC)はスイッチ・ランプ・ポンプ・チャックなど、「周辺機器と条件」を担当する頭脳
NCの役割を押さえておくと、
「これはNC側の話なのか?」
「これはPLC側でやるべき話なのか?」
という切り分けがしやすくなり、トラブル時の原因追及や仕様検討がスムーズになります。
<執筆者の実務コメント>
工作機械メーカーで約20年。制御盤ハード設計/PLCラダー設計(主に三菱・FANUC)を担当。本記事はNCとPLC/PMCの役割分担を押さえ、混同しやすいポイントを基礎から切り分けています。

